2020年4月1日に出版された『Let’s Start! 新しい日商簿記3級 テキスト&問題集 2020年度版』(「新しい日商簿記3級」)は、とにかく画期的な簿記本です。
テキストは全ページオールカラーで、ページレイアウトのセンスや色使いがvery good!
最高に美しく読みやすい簿記テキストに仕上がっています。
キャラ化した勘定科目や簡単な場面設定により、とっつきにくい簿記が楽しく学べるので、これから簿記の勉強を始めてみようかな…と思っている方におすすめです。
簿記の基本は仕訳です。
「仕訳を制する者は簿記を制す!」と言われるほど重要なので、検定試験の合格を目指すなら、仕訳は何としても得意にしておきたいところ。
そこで、「新しい日商簿記3級」STAGE3に登場する仕訳の徹底攻略法をまとめました。
▼STAGE2とSTAGE4、STAGE7はこちら。
【新しい日商簿記3級テキスト STAGE2】一発で覚えられる!簿記3級の仕訳攻略法まとめ 【新しい日商簿記3級テキスト STAGE4】仕訳攻略法まとめ。貸倒れと貸倒引当金、減価償却費、消耗品、租税公課など。 【新しい日商簿記3級テキスト STAGE7】仕訳攻略法まとめ。売上原価の算定(しくりくりし)、法人税等の計上など
STAGE3のテーマは以下の4項目です。
- 現金と預金
- 手形と電子記録債権(債務)
- 貸付けと借入れ、仮払いと仮受け
- 立替金と給料の支払い
このページでは、「新しい日商簿記3級」STAGE3に登場する仕訳の中から特に重要な問題を厳選して
- 問題文
- 解答(仕訳)
- この仕訳になる理由
の順で掲載しました。
※仕訳問題は、滝澤 ななみ 先生の許可を得て掲載しています。「この仕訳になる理由」は、当サイトで作成したものです。
問題文の下をクリックすると窓が開いて、解答(仕訳)とこの仕訳になる理由が読めるようになっています。
問題文を読んで、どんな仕訳になるのか少し考えてみる➡クリックして解答(仕訳)& この仕訳になる理由を見て答え合わせ……という感じで、テキストを参照しながら使ってみてください。
もし解けない問題があったり、疑問点が生じた場合は、必ず「新しい日商簿記3級」に戻って確認しながら進めてくださいね。
それでは、合格目指してがんばっていきましょう!
新しい日商簿記3級 STAGE3の仕訳
簿記上の現金の仕訳
「現金」といえば、一般には紙幣や硬貨のことですが、簿記では、他人振出小切手・送金小切手・郵便為替証書も「現金」として処理します。問題文中に他人振出小切手が登場したら「小切手」ではなく、「現金」を使って仕訳するようにしましょう。
他人振出小切手
(貸) 売 上 100
●「売上」(収益)が増加した➡「売上」は貸方(右側)
郵便為替証書
郵便為替証書が出てきたら、「現金」を使って仕訳します。
(貸) 売掛金 100
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
現金過不足の仕訳
帳簿上の現金残高(帳簿残高)と実際の現金残高(実際有高)が一致しない場合、「現金過不足」を使って処理します。
(貸) 現 金 10
●「現金」の反対側=借方(左側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は借方(左側)
(貸) 現金過不足 50
●「現金」の反対側=貸方(右側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は貸方(右側)
現金過不足の原因が判明したとき
後日、現金過不足の原因がわかったときは、現金過不足を正しい勘定科目に振り替えます。
「振り替える」場合、まず現金過不足を減らします。現金過不足が借方に計上されていたら、その反対側(貸方)に記入します。そして、相手科目を正しい勘定科目で処理します。
(貸) 現 金 10
●「現金」の反対側=借方(左側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は借方(左側)
(貸) 現金過不足 8
●「水道光熱費」の反対側=貸方(右側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は貸方(右側)
後日、現金過不足の原因がわかったときは、現金過不足を正しい勘定科目に振り替えます。
「振り替える」場合、まず現金過不足を減らします。現金過不足が貸方に計上されていたら、その反対側(借方)に記入します。そして、相手科目を正しい勘定科目で処理します。
(貸) 現金過不足 50
●「現金」の反対側=貸方(右側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は貸方(右側)
(貸) 売掛金 30
●「売掛金」の反対側=借方(左側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は借方(左側)
決算日まで現金過不足の原因が判明しなかったとき
現金過不足の原因が決算日までわからなかったときは、現金過不足から「雑損」(費用)または「雑益」(収益)に振り替えます。
(貸) 現 金 ✖✖✖
●「現金」の反対側=借方(左側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は借方(左側)
(貸) 現金過不足 2
●「雑損」(費用)が増加した➡「雑損」は借方(左側)
現金過不足の原因が決算日までわからなかったときは、現金過不足から「雑損」(費用)または「雑益」(収益)に振り替えます。
(貸) 現金過不足 ✖✖✖
●「現金」の反対側=貸方(右側)を「現金過不足」とする➡「現金過不足」は貸方(右側)
(貸) 雑 益 20
●「雑益」(収益)が増加した➡「雑益」は貸方(右側)
普通預金と定期預金の仕訳
「普通預金」と「定期預金」はどちらも資産なので、増えたら借方(左側)、減ったら貸方(右側)で処理します。
(貸) 現 金 100
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
(貸) 普通預金 200
●「普通預金」(資産)が減少した➡「普通預金」は貸方(右側)
複数の口座を開設している場合
(貸) 現 金 100
(借) 普通預金ーM銀行 200
(貸) 現 金 200
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
当座預金の仕訳
当座預金口座に預け入れたとき
(貸) 現 金 100
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
小切手を振り出したとき
(貸) 当座預金 100
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
自己振出小切手を受け取ったとき
以前に自分が振り出した小切手を受け取ったとき場面です。この場合は、「当座預金」(資産)の減少を取り消す処理をします。
(貸) 当座預金 ✖✖✖
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
(貸) 売掛金 100
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
当座借越の仕訳
当座預金残高を超えて小切手を振り出したとき
(貸) 当座預金 100
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
決算日に当座借越の状態であるとき
(貸) 当座借越 20
「当座借越」の代わりに「借入金」を使う場合もあります。
●「当座借越」(負債)が増加した➡「当座借越」は貸方(右側)
翌期首の処理
(貸) 当座預金 20
「当座借越」の代わりに「借入金」を使う場合もあります。
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
小口現金の仕訳
小口現金を前渡ししたとき
(貸) 当座預金 100
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
小口係から報告を受けたとき
タクシー代 40円 コピー用紙代 30円 切手代 20円
(借) 消耗品費 30
(借) 通信費 20
(貸) 小口現金 90
●「消耗品費」(費用)が増加した➡「消耗品費」は借方(左側)
●「通信費」(費用)が増加した➡「通信費」は借方(左側)
●「小口現金」(資産)が減少した➡「小口現金」は貸方(右側)
小口現金を補給したとき
(貸) 当座預金 90
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
支払報告と補給が同時のとき
タクシー代 40円 コピー用紙代 30円 切手代 20円
(借) 消耗品費 30
(借) 通信費 20
(貸) 当座預金 90
支払報告時と補給時の仕訳を合わせた仕訳が解答の仕訳になります。
(借) 消耗品費 30
(借) 通信費 20
(貸) 当座預金 90
●「消耗品費」(費用)が増加した➡「消耗品費」は借方(左側)
●「通信費」(費用)が増加した➡「通信費」は借方(左側)
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
約束手形の仕訳
約束手形の振り出し
(貸) 支払手形 100
●「支払手形」(負債)が増加した➡「支払手形」は貸方(右側)
支払い期日に約束手形が決済されたときは、「支払手形」(負債)を減少させます。
(貸) 当座預金 100
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
約束手形の受け取り
(貸) 売 上 100
●「売上」(収益)が増加した➡「売上」は貸方(右側)
支払い期日に約束手形が決済されたときは、「受取手形」(資産)を減少させます。
(貸) 受取手形 100
●「受取手形」(資産)が減少した➡「受取手形」は貸方(右側)
電子記録債権(債務)の仕訳
発生記録をしたとき
TO社(債務者)の仕訳です。
(貸) 電子記録債務 100
●「電子記録債務」(負債)が増加した➡「電子記録債務」は貸方(右側)
A社(債権者)の仕訳です。
(貸) 売掛金 100
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
消滅したとき
TO社(債務者)の仕訳です。
(貸) 当座預金 100
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
A社(債権者)の仕訳です。
(貸) 電子記録債権 100
●「電子記録債権」(資産)が減少した➡「電子記録債権」は貸方(右側)
貸付金と借入金の仕訳
お金を貸したとき
(貸) 現 金 100
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
お金を借りたとき
(貸) 借入金 100
●「借入金」(負債)が増加した➡「借入金」は貸方(右側)
お金を返してもらい、利息と一緒に受け取ったとき
(貸) 貸付金 100
(貸) 受取利息 100
●「貸付金」(資産)が減少した➡「貸付金」は貸方(右側)
●「受取利息」(収益)が増加した➡「受取利息」は貸方(右側)
お金を返し、利息と一緒に支払ったとき
(借) 支払利息 5
(貸) 現 金 105
●「支払利息」(費用)が増加した➡「支払利息」は借方(左側)
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
利息の計算
支払利息の計算:100円×3%×8か月/12か月=2円
(借) 支払利息 2
(貸) 現 金 102
●「支払利息」(費用)が増加した➡「支払利息」は借方(左側)
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
手形貸付金と手形借入金の仕訳
手形による貸付け
(貸) 現 金 100
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
手形による借入れ
(貸) 手形借入金 100
●「手形借入金」(負債)が増加した➡「手形借入金」は貸方(右側)
仮払金の仕訳
旅費の仮払いをしたとき
会社が従業員に出張旅費の概算額を渡した場合、「仮払金」(資産)で処理します。
(貸) 現 金 100
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
旅費の精算をしたとき
出張から従業員が帰ってきて、使った金額が確定したら、「仮払金」(資産)から「旅費交通費」(費用)に振り替えます。
(借) 旅費交通費 80
(貸) 仮払金 100
●「旅費交通費」(費用)が増加した➡「旅費交通費」は借方(左側)
●「仮払金」(資産)が減少した➡「仮払金」は貸方(右側)
仮受金の仕訳
内容不明の入金があったとき
口座に入金があったものの、その内容が不明のとき、「仮受金」(負債)で処理します。
(貸) 仮受金 100
●「仮受金」(負債)が増加した➡「仮受金」は貸方(右側)
内容が判明したとき
後日、内容が判明したときは、「仮受金」(負債)から該当する勘定科目に振り替えます。
注文を受けた際の手付金は「前受金」(負債)で処理します。
(貸) 前受金 100
●「前受金」(負債)が増加した➡「前受金」は貸方(右側)
立替金の仕訳
立替払いをしたとき
取引先が負担すべき費用を当社で立て替えたり、従業員が支払うべき金額を会社が立て替えたときは、「立替金」(資産)で処理します。従業員に対する立替金は「従業員立替金」(資産)で処理することもあります。
(貸) 現 金 20
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
立て替えた金額を返してもらったとき
当社が立て替えた金額を、あとで支払ってもらったときは、「立替金」(資産)を減少させます。
(貸) 従業員立替金 20
●「従業員立替金」(資産)が減少した➡「従業員立替金」は貸方(右側)
給料の支払いの仕訳
給料の支払いをしたとき
[勘定科目]
当座預金 普通預金 所得税預り金 社会保険料預り金 給料
(貸) 所得税預り金 10
(貸) 社会保険料預り金 5
(貸) 当座預金 85
●「所得税預り金」(負債)が増加した➡「所得税預り金」は貸方(右側)
●「社会保険料預り金」(負債)が増加した➡「社会保険料預り金」は貸方(右側)
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
源泉所得税を納付したとき
[勘定科目]
現金 所得税預り金 社会保険料預り金 給料
(貸) 現 金 10
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
社会保険料を納付したとき
[勘定科目]
現金 所得税預り金 社会保険料預り金 法定福利費
(借) 法定福利費 5
(貸) 現 金 10
●「法定福利費」(費用)が増加した➡「法定福利費」は借方(左側)
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
まとめ
以上、「新しい日商簿記3級」STAGE3に登場する仕訳を見てきました。
▼STAGE2とSTAGE4、STAGE7はこちら。
【新しい日商簿記3級テキスト STAGE2】一発で覚えられる!簿記3級の仕訳攻略法まとめ 【新しい日商簿記3級テキスト STAGE4】仕訳攻略法まとめ。貸倒れと貸倒引当金、減価償却費、消耗品、租税公課など。 【新しい日商簿記3級テキスト STAGE7】仕訳攻略法まとめ。売上原価の算定(しくりくりし)、法人税等の計上など
STAGE3は、「簿記上の現金、現金過不足、普通預金と定期預金、当座預金、当座借越、小口現金、約束手形、電子記録債権(債務)、貸付金と借入金、手形貸付金と手形借入金、仮払金、仮受金、立替金、給料の支払い」などのテーマが詰まった盛りだくさんの内容でした(一部取り上げていないテーマがあります)。
いずれも試験頻出のテーマで、簿記を勉強していく上では、必ず理解しておかなくてはならない項目ばかり。知識を使いこなせるようになるまで、しっかり勉強しておきましょう。
仕訳の作り方
- その勘定科目が資産・負債・収益・費用・純資産のどれにあたるのか
- 資産・負債・収益・費用・純資産のホームポジションは、借方(左側)・貸方(右側)のどちらか➡資産と費用は借方(左側)、負債と収益と純資産は貸方(右側)
の2つが、仕訳を作るためには必須の知識となります。
もし仕訳の作り方を忘れたら、この2つのポイントに立ち返ってもう一度考えてみてください。
「新しい日商簿記3級」STAGE1のLesson3「仕訳の作り方」には、簿記の一番重要なポイントがよくまとめられています。勉強し始めの時期は、ここを何度も繰り返し読んで「仕訳の作り方」をマスターしてくださいね!