早いもので、11月20日に実施された第144回日商簿記2級試験から約20日間が経ちました。
2級と3級に関しては、すでに全国各地の多くの商工会議所で合格発表が行われています。
当サイトの集計によると、12月8日時点で、日商簿記3級の合格率は約 45.3% (≒合格者数15,932名÷実受験者数35,203名)
日商簿記2級の合格率は約 13.1% (≒合格者数2,821名÷実受験者数21,525名)となっています。
まだ全国平均の合格率や合格者数などの最終的な結果の発表は行われていませんが、今回(144回)の試験は2級の合格率が低く、厳しい結果となりそうです。
そんな中、先日近所の書店に立ち寄ったところ、2017年2月に実施される第145回日商簿記2級のラストスパート模試が並んでいて驚きました。
試験後約1週間で発売!
ネットスクールといえば、パソコンやスマホがあればWEBサイト上で授業を見ることができるWEB講座を開講しています。
奥付を見ると、第145回試験 日商簿記2級 ラストスパート模試の出版は2016年11月28日となっています。ということは、第144回の日商簿記検定試験が終わって約1週間で次の第145回向け予想問題集が出版されたということになります。すごいスピード感ですね。
▼確かに「2017年2月26日第145回試験」と書かれています。私の見間違いではありませんでした。
第1予想の論点が前回試験と同じ!?
ただ、通常試験直前期に腕試しや本試験のシミュレーション目的として使う予想問題集がこんんなに早く出版されるなんて。一体どういうことなんだろう…と不安がよぎります。
そこで、念のためラストスパート模試の出題予想を確認してみました。
なんと第1予想工業簿記(第4問、第5問)の論点が、第144回本試験に出題された工業簿記(第4問、第5問)の論点と全く同じでした。
▼第145回ラストスパート模試第1予想の第4問は費目別計算、第5問は単純総合原価計算となっています。
▼第144回日商簿記2級の本試験で、第4問は費目別計算、第5問は単純総合原価計算が出題されていました。
第144回で出題された論点を次の第145回試験の第1予想にあげるということは、普通は考えられません。
なぜなら、過去の出題実績を見ると、同じ論点が2回連続出題されることは極めて稀で、仮に同じ論点(136回と137回)だとしても、出題形式は異なっている場合がほとんどだからです。
▼136回第4問と137回第4問は出題論点は費目別計算で同じですが、形式が仕訳と製造原価報告書等というように異なっています。
回数 | 出題論点 | 解答形式 |
---|---|---|
128 | 個別原価計算 | 原価計算表 |
129 | 部門別計算 | 配賦表 |
130 | 工程別総合原価計算 | 勘定記入 |
131 | 本社工場会計 | 工場での仕訳 |
132 | 費目別計算 | 仕訳 |
133 | 本社工場会計 | 仕訳 |
134 | 費目別計算 | 製造原価報告書とP/L |
135 | 部門別計算 | 勘定記入、配賦表 |
136 | 費目別計算 | 仕訳 |
137 | 費目別計算 | 製造原価報告書等 |
138 | 個別原価計算 | 仕訳 |
139 | 部門別計算 | 勘定記入、配賦表 |
140 | 標準原価計算 | 仕訳、P/L |
141 | 本社工場会計 | 工場での仕訳 |
142 | 標準原価計算 | 仕訳、製造間接費差異 |
143 | 個別原価計算 | 勘定記入、P/L |
144 | 費目別計算 | 勘定記入 |
145 | ? | ? |
▼第5問は、同じ論点が2回連続して出題されたことは(少なくとも128回以降は)一度もありませんでした。
回数 | 出題論点 | 解答形式 |
---|---|---|
128 | 等級別総合原価計算 | 単位原価等 |
129 | 組別総合原価計算 | 総合原価計算表 |
130 | 単純総合原価計算 | 総合原価計算表 |
131 | 工程別総合原価計算 | 総合原価計算表 |
132 | 全部原価計算と直接原価計算 | 貢献利益等 |
133 | 実際個別原価計算 | 勘定記入 |
134 | 全部原価計算と直接原価計算の比較 | 文章穴埋め |
135 | 標準原価計算 | 差異分析等 |
136 | 全部原価計算と直接原価計算の比較 | 損益計算書 |
137 | 組別総合原価計算 | 総合原価計算表 |
138 | 単純総合原価計算 | 総合原価計算表 |
139 | 直接原価計算(CVP) | 損益計算書 |
140 | 等級別総合原価計算 | 単位原価等 |
141 | 直接原価計算(CVP) | 売上高等 |
142 | 工程別総合原価計算 | 総合原価等 |
143 | 標準原価計算 | 差異分析等 |
144 | 単純総合原価計算 | 単位原価等 |
145 | ? | ? |
これは一体どういうことなの?
それでは、このラストスパート模試第1予想工業簿記(第4問、第5問)の論点が第144回本試験の工業簿記(第4問、第5問)の論点と全く同じという事実を、どのように捉えればいいのでしょう?
通常であれば、予想問題集は直前の回(例えば144回)の出題実績を踏まえて、次の試験(145回)の予想を立てて出すべきです。ところが、ネットスクールは144回試験が行われる前に145回試験の予想を立てて本を出してしまったのではないかと思います(これは私の推測です)。
なぜなら、過去の出題実績から同じ論点が繰り返し出題されることはほとんどないのに、最も重要な第1予想で前回試験の出題論点を予想するということは考えられないからです。
また、奥付によると、出版年月日が本試験日の約1週間後となっています。本試験日当日の11月20日または翌日の21日に出版社に原稿を提出してその1週間後に出版できるとは(普通は)考えられません。
そう考えてみると、ネットスクールは144回の試験問題を見る前に予想問題集を完成させてしまったのだと(私は)思います。
ちなみに第144回のラストスパート模試は、第143回試験が実施された6月12日から3か月以上経過してから出版されています。145回向けについては(理由はわかりませんが)とにかく急いで出したかったということなのでしょう。
結論
前回の試験問題を見ないで立てた予想をもとに作られた問題集では、信頼性が欠けるのではないでしょうか。的中率などの精度も落ちると思われます。
これはあくまで私個人の意見ですが、今回のこの日商簿記2級ラストスパート模試はおすすめできません。
ちなみに、ラストスパート模試に毎回掲載されている「過去の出題傾向と対策」の表はこのようになっています。
写真左は第144回試験向け、右は第145回試験向けのものですが、どちらも第143回本試験までの出題実績をもとに作られており、見比べても見分けがつかないほど同じです。
お手元に第144回試験のラストスパート模試をお持ちの方は、ぜひ確認してみてください。
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