2020年4月1日に出版された『Let’s Start! 新しい日商簿記2級 商業簿記 テキスト&問題集 2020年度版』(「新しい日商簿記2級 商業簿記」)は、とにかく画期的な簿記本です。
テキストは全ページオールカラーで、ページレイアウトのセンスや色使いがvery good!
最高に美しく読みやすい簿記テキストに仕上がっています。
キャラ化した勘定科目や簡単な場面設定により、とっつきにくい簿記が楽しく学べるので、これから簿記の勉強を始めてみようかな…と思っている方におすすめです。
簿記の基本は仕訳です。
「仕訳を制する者は簿記を制す!」と言われるほど重要なので、検定試験の合格を目指すなら、仕訳は何としても得意にしておきたいところ。
このページでは、「新しい日商簿記2級 商業簿記」STAGE6 テーマ17 連結会計①、テーマ18 連結会計② に登場する仕訳の徹底攻略法をまとめました。
連結会計に登場する仕訳は以下のとおりです。
- 支配獲得日の連結
- 支配獲得後1年目の連結
- 支配獲得後2年目の連結
- 内部取引高、債権債務の相殺消去
- 手形取引の修正
- 貸倒引当金の修正
- 未実現利益の消去(商品)
- 未実現利益の消去(土地)
この「新しい日商簿記2級 商業簿記」に登場する仕訳の中から特に重要な問題を厳選して
- 問題文
- 解答(仕訳)
- この仕訳になる理由
の順で掲載しました。
※仕訳問題は、滝澤 ななみ 先生の許可を得て掲載しています。「この仕訳になる理由」は、当サイトで作成したものです。
問題の下をクリックすると窓が開いて、解答(仕訳)とこの仕訳になる理由が読めるようになっています。
問題文を読んで、どんな仕訳になるのか少し考えてみる➡クリックして解答(仕訳)& この仕訳になる理由を見て答え合わせ……という感じで、テキストを参照しながら使ってみてください。
もし解けない問題があったり、疑問点が生じた場合は、必ず「新しい日商簿記2級 商業簿記」に戻って確認しながら進めてくださいね。
それでは、合格目指してがんばっていきましょう!
連結会計
支配獲得日の連結
投資と資本の相殺消去①(100%所有の場合)
支配獲得日には、親会社の投資と子会社の資本を相殺消去する仕訳をします。
TO社の資産 S社株式 500円
S社 資本金 300円 利益剰余金 200円
(借) 利益剰余金 200
(貸) S社株式 500
●「利益剰余金」(純資産)が減少した➡「利益剰余金」は借方(左側)
●「S社株式」(資産)が減少した➡「S社株式」は貸方(右側)
投資と資本の相殺消去②(部分所有の場合)
TO社の資産 S社株式 300円
S社 資本金 300円 利益剰余金 200円
①非支配株主の持分割合:100%-60%=40%
②非支配株主持分:(300円+200円)×40%=200円
(借) 利益剰余金 200
(貸) S社株式 300
(貸) 非支配株主持分 200
●「利益剰余金」(純資産)が減少した➡「利益剰余金」は借方(左側)
●「S社株式」(資産)が減少した➡「S社株式」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が増加した➡「非支配株主持分」は貸方(右側)
投資と資本の相殺消去③(のれんの発生)
TO社の資産 S社株式 400円
S社 資本金 300円 利益剰余金 200円
①非支配株主の持分割合:100%-60%=40%
②非支配株主持分:(300円+200円)×40%=200円
(借) 利益剰余金 200
(借) のれん 100
(貸) S社株式 400
(貸) 非支配株主持分 200
●「利益剰余金」(純資産)が減少した➡「利益剰余金」は借方(左側)
●「のれん」(資産)が増加した➡「のれん」は借方(左側)
●「S社株式」(資産)が減少した➡「S社株式」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が増加した➡「非支配株主持分」は貸方(右側)
支配獲得後1年目の連結
のれんの償却(当期分の修正仕訳)
支配獲得日の投資と資本の相殺消去で生じたのれん(資産)は、20年以内に定額法等によって償却します。
のれん償却:100円÷10年=10円
(貸) のれん 10
●「のれん」(資産)が減少した➡「のれん」は貸方(右側)
子会社当期純利益の振り替え(当期分の修正仕訳)
子会社が当期に計上した当期純利益のうち、非支配株主に帰属する部分は、非支配株主持分(純資産)に振り替えます。
非支配株主持分:200円×40%=80円
(貸) 非支配株主持分 80
●「のれん」(資産)が減少した➡「のれん」は貸方(右側)
子会社配当金の修正(当期分の修正仕訳)
親会社株主の分:50円×60%=30円→受取配当金
非支配株主の分:50円×40%=20円→非支配株主持分
(貸) 利益剰余金 50 ←純資産の減少の取り消し
+
(貸) 受取配当金 20
(借) 非支配株主持分 20
(貸) 利益剰余金 50
●「非支配株主持分」(純資産)が減少した➡「非支配株主持分」は借方(左側)
●「利益剰余金」(純資産)が増加した➡「利益剰余金」は貸方(右側)
支配獲得後2年目の連結
支配獲得後2年目の連結修正仕訳
支配獲得後1年目の連結修正仕訳をまとめます。
(借) 利益剰余金 200
(借) のれん 100
(貸) S社株式 400
(貸) 非支配株主持分 200
+
(貸) のれん 10
+
(貸) 非支配株主持分 80
+
(借) 非支配株主持分 20
(貸) 利益剰余金 50
①利益剰余金:200円+10円+80円+30円-50円=270円
②のれん:100円-10円=90円
③非支配株主持分:200円+80円-20円=260円
(借) 利益剰余金 270
(借) のれん 90
(貸) S社株式 400
(貸) 非支配株主持分 260
●「利益剰余金」(純資産)が減少した➡「利益剰余金」は借方(左側)
●「のれん」(資産)が増加した➡「のれん」は借方(左側)
●「S社株式」(資産)が減少した➡「S社株式」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が増加した➡「非支配株主持分」は貸方(右側)
内部取引高、債権債務の相殺消去
連結グループ間取引の相殺消去
TO社からS社
売上高 500円
受取利息 20円
売掛金 100円
貸付金 40円
S社からTO社
売上原価(仕入) 500円
支払利息 20円
買掛金 100円
借入金 40円
(貸) 売上原価 500
(借) 受取利息 20
(貸) 支払利息 20
(借) 買掛金 100
(貸) 売掛金 100
(借) 借入金 40
(貸) 貸付金 40
●「売上原価」(費用)が減少した➡「売上原価」は貸方(右側)
●「受取利息」(収益)が減少した➡「受取利息」は借方(左側)
●「支払利息」(費用)が減少した➡「支払利息」は貸方(右側)
●「買掛金」(負債)が減少した➡「買掛金」は借方(左側)
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
●「借入金」(負債)が減少した➡「借入金」は借方(左側)
●「貸付金」(資産)が減少した➡「貸付金」は貸方(右側)
手形取引の修正
手形の割引
連結会社間で振り出した手形を銀行で割り引いている場合、個別会計上では手形の割引きとして処理しています。しかし、連結会計上では、連結グループで銀行からお金を借り入れ、手形を振り出したと考えるため、短期借入金(負債)とします。
→連結会計上は支払手形(負債)を短期借入金(負債)に振り替える仕訳をします。
(貸) 短期借入金 100
●「短期借入金」(負債)が増加した➡「短期借入金」は貸方(右側)
手形の割引(割引料がある場合)
(貸) 短期借入金 100
(借) 支払利息 5
(貸) 手形売却損 5
(借) 前払利息 3
(貸) 支払利息 3
●「短期借入金」(負債)が増加した➡「短期借入金」は貸方(右側)
●「支払利息」(費用)が増加した➡「支払利息」は借方(左側)
●「手形売却損」(費用)が減少した➡「手形売却損」は貸方(右側)
●「前払利息」(資産)が増加した➡「前払利息」は借方(左側)
●「支払利息」(費用)が減少した➡「支払利息」は貸方(右側)
手形の裏書き
貸倒引当金の修正
親会社の期末貸倒引当金の修正
貸倒引当金の修正額:100円×5%=5円
(貸) 売掛金 100
(借) 貸倒引当金 5
(貸) 貸倒引当金繰入 5
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
●「貸倒引当金」(負債)が減少した➡「貸倒引当金」は借方(左側)
●「貸倒引当金繰入」(費用)が減少した➡「貸倒引当金繰入」は貸方(右側)
子会社の期末貸倒引当金の修正
貸倒引当金の修正額:100円×5%=5円
非支配株主持分:5円×40%=2円
(貸) 売掛金 100
(借) 貸倒引当金 5
(貸) 貸倒引当金繰入 5
(借) 非支配株主に帰属する当期純利益 2
(貸) 非支配株主持分 2
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
●「貸倒引当金」(負債)が減少した➡「貸倒引当金」は借方(左側)
●「貸倒引当金繰入」(費用)が減少した➡「貸倒引当金繰入」は貸方(右側)
●「非支配株主に帰属する当期純利益」が減少した➡「非支配株主に帰属する当期純利益」は借方(左側)
●「非支配株主持分」(純資産)が増加した➡「非支配株主持分」は貸方(右側)
未実現利益の消去(商品)
期末商品に含まれる未実現利益の消去(ダウンストリームの場合)
未実現利益:120円÷1.2×0.2=20円
(貸) 商 品 20
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
期末商品に含まれる未実現利益の消去(アップストリームの場合)
未実現利益:120円÷1.2×0.2=20円
非支配株主持分:20円×40%=8円
(貸) 商 品 20
(借) 非支配株主持分 8
(貸) 非支配株主に帰属する当期純利益 8
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が減少した➡「非支配株主持分」は借方(左側)
●「非支配株主に帰属する当期純利益」が増加した➡「非支配株主に帰属する当期純利益」は貸方(右側)
期首・期末商品に含まれる未実現利益の消去(ダウンストリームの場合)
未実現利益(期首商品):120円÷1.2×0.2=20円
未実現利益(期末商品):240円÷1.2×0.2=40円
(貸) 商 品 20
(借) 商 品 20
(貸) 売上原価 20
(借) 売上原価 40
(貸) 商 品 40
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
●「商品」(資産)が増加した➡「商品」は借方(左側)
●「売上原価」(費用)が減少した➡「売上原価」は貸方(右側)
●「売上原価」(費用)が増加した➡「売上原価」は借方(左側)
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
期首・期末商品に含まれる未実現利益の消去(アップストリームの場合)
未実現利益(期首商品):120円÷1.2×0.2=20円
非支配株主持分:20円×40%=8円
未実現利益(期末商品):240円÷1.2×0.2=40円
非支配株主持分:40円×40%=16円
期首商品
(貸) 商 品 20
(借) 非支配株主持分 8
(貸) 利益剰余金 8
(借) 商 品 20
(貸) 売上原価 20
(借) 非支配株主に帰属する当期純利益 8
(貸) 非支配株主持分 8
期末商品
(貸) 商 品 40
(借) 非支配株主持分 16
(貸) 非支配株主に帰属する当期純利益 16
期首商品
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が減少した➡「非支配株主持分」は借方(左側)
●「利益剰余金」(純資産)が増加した➡「利益剰余金」は貸方(右側)
●「商品」(資産)が増加した➡「商品」は借方(左側)
●「売上原価」(費用)が減少した➡「売上原価」は貸方(右側)
●「非支配株主に帰属する当期純利益」が減少した➡「非支配株主に帰属する当期純利益」は借方(左側)
●「非支配株主持分」(純資産)が増加した➡「非支配株主持分」は貸方(右側)
期末商品
●「商品」(資産)が減少した➡「商品」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が減少した➡「非支配株主持分」は借方(左側)
●「非支配株主に帰属する当期純利益」が増加した➡「非支配株主に帰属する当期純利益」は貸方(右側)
未実現利益の消去(土地)
ダウンストリームの場合
TO社の個別会計上の仕訳
(貸) 土 地 500
(貸) 固定資産売却益 50
S社の個別会計上の仕訳
(貸) 現金など 550
(貸) 土 地 50
●「土地」(資産)が減少した➡「土地」は貸方(右側)
アップストリームの場合
固定資産売却益:550円-500円=50円
非支配株主持分:50円×40%=20円
(貸) 土 地 50
(借) 非支配株主持分 20
(貸) 非支配株主に帰属する当期純利益 20
●「土地」(資産)が減少した➡「土地」は貸方(右側)
●「非支配株主持分」(純資産)が減少した➡「非支配株主持分」は借方(左側)
●「非支配株主に帰属する当期純利益」が増加した➡「非支配株主に帰属する当期純利益」は貸方(右側)
まとめ
以上、「新しい日商簿記2級 商業簿記」STAGE6 テーマ17 連結会計①、テーマ18 連結会計② に登場する仕訳を見てきました。
連結会計は、親会社の個別財務諸表と子会社の個別財務諸表を合算してから、連結精算表上の修正仕訳を加えていくことになります。
最初に金額が合計されているという点を意識して、学習していきましょう。
仕訳の作り方
- その勘定科目が資産・負債・収益・費用・純資産のどれにあたるのか
- 資産・負債・収益・費用・純資産のホームポジションは、借方(左側)・貸方(右側)のどちらか➡資産と費用は借方(左側)、負債と収益と純資産は貸方(右側)
の2つが、仕訳を作るためには必須の知識となります。
もし仕訳の作り方を忘れたら、この2つのポイントに立ち返ってもう一度考えてみてください。
「新しい日商簿記3級」STAGE1のLesson3「仕訳の作り方」に、簿記の一番重要なポイントがよくまとめられています。2級の勉強を始められた方も、途中で何度かここに戻って「仕訳の作り方」を確認しておいてくださいね!