2020年4月1日に出版された『Let’s Start! 新しい日商簿記2級 商業簿記 テキスト&問題集 2020年度版』(「新しい日商簿記2級 商業簿記」)は、とにかく画期的な簿記本です。
テキストは全ページオールカラーで、ページレイアウトのセンスや色使いがvery good!
最高に美しく読みやすい簿記テキストに仕上がっています。
キャラ化した勘定科目や簡単な場面設定により、とっつきにくい簿記が楽しく学べるので、これから簿記の勉強を始めてみようかな…と思っている方におすすめです。
簿記の基本は仕訳です。
「仕訳を制する者は簿記を制す!」と言われるほど重要なので、検定試験の合格を目指すなら、仕訳は何としても得意にしておきたいところ。
このページでは、「新しい日商簿記2級 商業簿記」STAGE3 テーマ10 外貨建取引に登場する仕訳の徹底攻略法をまとめました。
外貨建取引に登場する仕訳は以下のとおりです。
- 外貨建取引の処理
- 決済時の処理
- 決算時の処理
- 為替予約
この「新しい日商簿記2級 商業簿記」に登場する仕訳の中から特に重要な問題を厳選して
- 問題文
- 解答(仕訳)
- この仕訳になる理由
の順で掲載しました。
※仕訳問題は、滝澤 ななみ 先生の許可を得て掲載しています。「この仕訳になる理由」は、当サイトで作成したものです。
問題の下をクリックすると窓が開いて、解答(仕訳)とこの仕訳になる理由が読めるようになっています。
問題文を読んで、どんな仕訳になるのか少し考えてみる➡クリックして解答(仕訳)& この仕訳になる理由を見て答え合わせ……という感じで、テキストを参照しながら使ってみてください。
もし解けない問題があったり、疑問点が生じた場合は、必ず「新しい日商簿記2級 商業簿記」に戻って確認しながら進めてくださいね。
それでは、合格目指してがんばっていきましょう!
外貨建取引
輸入時の仕訳
商品を輸入したときは、輸入時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で仕入れの処理をします。
換算額:10ドル×100円=1,000円
(貸) 買掛金 1,000
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
輸入時の仕訳(手付金の支払いがあるとき)
商品の輸入に先立って、手付金を支払ったときは、手付金支払時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で前払金(資産)を計上します。
前払金:2ドル×101円=202円
(貸) 現 金 202
●「現金」(資産)が減少した➡「現金」は貸方(右側)
その後、商品を輸入したときは、①計上している前払金(資産)を減額します。
このとき、②商品の仕入代金(外貨建て)と前払金(外貨建て)との差額部分(通常は買掛金)は、輸入時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で計上します。
そして、①と②の合計額をもって③仕入(費用)を計上します。
②買掛金:(10ドル-2ドル)×105円=840円
③仕入:202円+840円=1,042円
(貸) 前払金 202
(貸) 買掛金 840
●「前払金」(資産)が減少した➡「前払金」は貸方(右側)
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
輸出時の仕訳
商品を輸出したときは、輸出時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で売上げの処理をします。
換算額:20ドル×110円=2,200円
(貸) 売 上 2,200
●「売上」(収益)が増加した➡「売上」は貸方(右側)
輸出時の仕訳(手付金の受け取りがあるとき)
商品の輸出に先立って、手付金を受け取っていたときは、手付金受取時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で前受金(負債)を計上します。
前受金:2ドル×112円=224円
(貸) 前受金 224
●「前受金」(負債)が増加した➡「前受金」は貸方(右側)
その後、商品を輸出したときは、①計上している前受金(負債)を減額します。
このとき、②商品の売上代金(外貨建て)と前受金(外貨建て)との差額部分(通常は売掛金)は、輸出時(取引発生時)の為替相場で換算した金額で計上します。
そして、①と②の合計額をもって③売上(収益)を計上します。
②売掛金:(20ドル-2ドル)×115円=2,070円
③売上:224円+2,070円=2,294円
(借) 売掛金 2,070
(貸) 売 上 2,294
●「売掛金」(資産)が増加した➡「売掛金」は借方(左側)
●「売上」(収益)が増加した➡「売上」は貸方(右側)
決済時の処理
掛け代金を決済したときは、①発生時の為替相場で換算している買掛金(負債)や売掛金(資産)を減少させます。
そして、②決済金額については、決済時の為替相場で換算した金額で計上します。
そのときに生じる貸借差額(為替相場の変動による差額は為替差損益で処理します。
①買掛金:8ドル×105円=840円
②当座預金:8ドル×106円=848円
(借) 為替差損益 8
(貸) 当座預金 848
●「為替差損益」(費用)が増加した➡「為替差損益」は借方(左側)
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
①売掛金:18ドル×115円=2,070円
②当座預金:18ドル×116円=2,088円
(貸) 売掛金 2,070
(貸) 為替差損益 18
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
●「為替差損益」(収益)が増加した➡「為替差損益」は貸方(右側)
決算時の処理
外貨建ての資産・負債は、HRで換算されていますが、外貨建ての資産・負債のうち、貨幣項目については、決算日において決算時の為替相場(CR)に換算替えします。
また、CRで換算した際に生じた為替差額は、為替差損益で処理します。
①CR換算額:10ドル×111円=1,110円
②帳簿価額:1,000円
③為替差損益:1,110円-1,000円=110円 現金の増加
(貸) 為替差損益 110
●「為替差損益」(収益)が増加した➡「為替差損益」は貸方(右側)
①CR換算額:20ドル×111円=2,220円
②帳簿価額:2,240円
③為替差損益:2,220円-2,240円=▲20円 売掛金の減少
(貸) 売掛金 20
●「売掛金」(資産)が減少した➡「売掛金」は貸方(右側)
①CR換算額:15ドル×111円=1,665円
②帳簿価額:1,620円
③為替差損益:1,665円-1,620円=45円 買掛金の増加
(貸) 買掛金 45
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
為替予約の仕訳
取引発生時までに為替予約を付したとき(取引発生時の処理)
営業取引について、取引発生時までに為替予約を付したときは、FR(予約レート)で換算します。
換算額:10ドル×104円=1,040円
(貸) 買掛金 1,040
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
取引発生時までに為替予約を付したとき(決算時の処理)
為替予約を付したときは、決算時において、外貨建ての売掛金や買掛金等について換算替えをしません。
取引発生時までに為替予約を付したとき(決済時の処理)
為替予約を付したときは、予約レートで決済されます。したがって、換算差額(為替差損益)は生じません。
買掛金の帳簿価額:10ドル×104円=1,040円
(貸) 当座預金 1,040
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
取引発生後に為替予約を付したとき(取引発生時の処理)
営業取引について、取引発生後に為替予約を付したときの処理方法です。
取引が発生したときは、取引発生時の直物為替相場で換算します。
換算額:10ドル×102円=1,020円
(貸) 買掛金 1,020
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
取引発生後に為替予約を付したとき(為替予約時の処理)
営業取引について、取引発生後に為替予約を付したときは、外貨建債権債務(売掛金や買掛金など)をFR(予約レート)で換算替えします。
①FR換算額:10ドル×105円=1,050円
②帳簿価額:1,020円
③為替差損益:1,050円-1,020円=30円 買掛金の増加
(貸) 買掛金 30
●「買掛金」(負債)が増加した➡「買掛金」は貸方(右側)
取引発生後に為替予約を付したとき(決算時の処理)
為替予約を付したときは、決算時において、外貨建ての売掛金や買掛金等について換算替えをしません。
取引発生後に為替予約を付したとき(決済時の処理)
為替予約を付したときは、予約レートで決済されます。したがって、換算差額(為替差損益)は生じません。
決済額:10ドル×105円=1,050円 買掛金の帳簿価額
(貸) 当座預金 1,050
●「当座預金」(資産)が減少した➡「当座預金」は貸方(右側)
まとめ
以上、「新しい日商簿記2級 商業簿記」STAGE3 テーマ10 外貨建取引に登場する仕訳を見てきました。
輸入時や輸出時の処理→決済時の処理→決算時の処理というようにいつ、なにを、どのように換算していくのか順を追って抑えていきましょう。
為替予約は、取引発生時までに為替予約を付したのか、取引発生後に為替予約を付したのかで処理がことなります。処理方法の違いを抑えておきましょう。
仕訳の作り方
- その勘定科目が資産・負債・収益・費用・純資産のどれにあたるのか
- 資産・負債・収益・費用・純資産のホームポジションは、借方(左側)・貸方(右側)のどちらか➡資産と費用は借方(左側)、負債と収益と純資産は貸方(右側)
の2つが、仕訳を作るためには必須の知識となります。
もし仕訳の作り方を忘れたら、この2つのポイントに立ち返ってもう一度考えてみてください。
「新しい日商簿記3級」STAGE1のLesson3「仕訳の作り方」に、簿記の一番重要なポイントがよくまとめられています。2級の勉強を始められた方も、途中で何度かここに戻って「仕訳の作り方」を確認しておいてくださいね!