先日行われた第142回の日商簿記2級試験の問題の解答と詳しい解説を掲載します。
解答・解説は日本商工会議所が発表しているものではなく、私が作ったものです。100%正しいとは限りませんので、参考程度にご覧ください。
問題は掲載しませんので、お手持ちの問題用紙等を準備して見ていただくといいと思います。
142回日商簿記2級の予想合格率
142回の日商簿記2級試験問題について、私が解いてみた感想は
- 第1問 やさしい 目標 16点
- 第2問 普通 目標 16点
- 第3問 難しい 目標 10点
- 第4問 やさしい 目標 16点
- 第5問 やさしい 目標 20点
でした。
2級商業簿記の難易度は毎回変動するのに対して、工業簿記については毎回基本的な問題が出題され、比較的やさしい問題となっています。
142回試験では、工業簿記(第4問、第5問)はやさしく、商業簿記(第1問、第2問)はやさしいか普通の難易度の問題となりました。第3問の貸借対照表だけは分量が多く難しい問題となってしまいましたが、落ち着いて解けば部分点は拾うことができる内容だと思います。
前回の141回試験は、試験問題が難しく全国平均の合格率が11.8%と非常に厳しい結果となってしまいましたが、今回の試験では合格率が回復し、当サイトの予想通り約34%前後になるのではないかと期待しています。(外れたらゴメンなさい。)
正式な結果が出そろい次第、またコメントしてみたいと思います。
第1問 仕訳問題
1.消費税
商品を販売する際に消費税を税込方式で記帳する場合の処理方法について問われています。
本体価格¥500,000 の商品で、消費税は8%なので、税込価格は¥540,000(=¥500,000×1.08)
代金は今月末受取りなので、掛売上の仕訳を記入すればOKです。
解答
(貸方) 売 上 540,000
2.研究開発費
実験専用の機器の代金¥600,000、研究開発のみの目的で使用するための備品¥300,000、研究員の給料等¥450,000はいずれも「研究開発費」で処理します。
小切手を振り出した分については当座預金の減少、翌月末払いは未払金、現金による支払いは現金の減少なので、解答仕訳は次のようになります。
解答
(貸方) 当座預金 600,000
(貸方) 未払金 300,000
(貸方) 現 金 450,000
3.不渡手形
備品売却時に受け取った約束手形¥400,000が支払期日を迎えたにもかかわらず、決済されなかったという問題。
まず備品売却時に受け取った約束手形については、「営業外受取手形」を使うという点がポイントです。備品は商品ではないから「受取手形」ではなく「営業外受取手形」を使うという点に注意してください。
また、この「営業外受取手形」が支払期日に決済されなかったということから、「不渡手形」に振り替える処理を行うことになります。
解答
(貸方) 営業外受取手形 400,000
4.仕入割引
仕入割引の問題。
掛けで仕入れた商品代金¥7,000,000を現金で支払う際に¥7,000(=¥7,000,000×0.1%)分を仕入割引として差し引いて支払う取引を記入すれば正解です。
解答
(貸方) 仕入割引 7,000
(貸方) 現 金 6,993,000
5.本支店会計
本支店会計において、支店の仕訳を答えます。
広告宣伝費¥210,000(=¥840,000÷4)については支店が負担すべきものなので、「広告宣伝費」を計上します。反対側の貸方には「本店」を用いて仕訳をすればOKです。
解答
(貸方) 本 店 210,000
第2問
株主資本等変動計算書が出題されました。問題の資料から下記のように仕訳をメモしておいて、それをもとに答案用紙の表に書きこんでいくといいでしょう。
資料1.の仕訳
(貸方) 資本金 480,000
(貸方) 資本準備金 320,000
資料2.(1)(2)の仕訳
(借方) その他資本剰余金 110,000
(貸方) 未払配当金 500,000
(貸方) 利益準備金 40,000
(貸方) 資本準備金 10,000
資料2.(3)の仕訳
(貸方) 別途積立金 80,000
資料3.の仕訳
(貸方) 諸負債 ?
(貸方) 資本金 900,000
(貸方) 資本準備金 500,000
(貸方) その他資本剰余金400,000
資料4.の仕訳
(貸方) 繰越利益剰余金 750,000
第3問
貸借対照表を作成する問題が出題されました。未処理事項と決算整理事項の仕訳を示しておきます。
[資料Ⅱ]未処理事項
1.前期において発生した売掛金なので、貸倒損失ではなく貸倒引当金を使って仕訳を行います。
(貸方) 売掛金 5,000
2.前期に貸倒処理した売掛金のうち回収できた部分については、「償却債権取立益」勘定で仕訳を行うので、仮受金から「償却債権取立益」に振り替えます。
(貸方) 償却債権取立益 2,000
3.通信費未処理分について仕訳を行います。「当座預金」ではなく、「現金預金」を使うところがポイントです。
(貸方) 現金預金 7,500
4.売上取消処理を行います。「売上」を減らして、「前受金」を計上します。
(貸方) 前受金 6,000
[資料Ⅲ]決算整理事項
1.[資料Ⅱ]未処理事項1.より売掛金が¥5,000減少しています。この分を加味して貸倒引当金を算定します。
受取手形75,000+売掛金610,000-5,000=680,000
が受取手形および売掛金の残高。これに1%をかけて求められる6,800が貸倒引当金の金額となります。
貸借対照表に載せるべき貸倒引当金:(75,000+610,000-5,000)×1%=6,800
貸倒引当金:8,000-5,000(資料Ⅱ1.より)=3,000
6,800-3,000=3,800
(貸方) 貸倒引当金 3,800
2.売上原価
①より
(貸方) 買掛金 8,500
ここで[資料Ⅱ]4.より商品が返品されてきた原価4,900の商品と、8,500を加算します。②より返品された商品は、帳簿上の商品にふくまれていないため。
帳簿上の商品:940,000+4,900+8,500=953,400
4,900は実地棚卸高にも含まれていないため加算します。
実地棚卸高:946,000+4,900=950,900
帳簿上の商品 953,400 と実地棚卸高 950,900 の差額 2,500 については棚卸減耗損 として計上します。
(貸方) 繰越商品 1,040,000
(借方) 繰越商品 953,400
(貸方) 仕 入 953,400
(借方) 棚卸減耗損 2,500
(貸方) 繰越商品 2,500
3.問題文の指示にしたがい、給料、水道光熱費について未処理だった未払費用の再振替仕訳と期末の未払費用の形状を行います。
(貸方) 給 料 140,000
(貸方) 水道光熱費 10,000
(借方) 水道光熱費 12,000
(貸方) 未払費用 155,000
4.長期前払費用
長期前払費用の金額:48,000
48,000÷24か月=2,000(1か月分)
当期分➡1か月分 2,000
1年以内に費用化される部分➡ 24,000(=2,000×12か月)
残り(長期前払費用)➡ 22,000
(借方) 前払費用 24,000
(貸方) 長期前払費用 26,000
5.減価償却
(1) 建物
建物:1,200,000
新建物(H27.10.1から):150,000
旧建物:1,050,000
旧建物の減価償却費
1,050,000÷30年=35,000
新建物の減価償却費
150,000÷30年÷12か月×6か月=2,500
建物の減価償却費合計:37,500(=35,000+2,500)
概算で計上されている減価償却費:3,000×11か月=33,000
差額:4,500(=37,500-33,000)
(2) 備品
200%定率法の償却率:0.25
1÷8×200%=0.25
決算整理前残高試算表の備品減価償却累計額 436,000 は、毎月で計上されてきた減価償却費(66,000=6,000×11か月)を含む
減価償却費を定率法で計算するため、差額で期首の減価償却累計額を求めます。
期首の減価償却累計額:436,000-66,000=370,000
備品の減価償却費(年間):(640,000-370,000)×0.25=67,500
差額:1,500(=67,500-66,000)
(貸方) 建物減価償却累計額4,500
(貸方) 備品減価償却累計額1,500
6.借入金
借入金 600,000 について
2月から3月分の利息:2,400(=600,000×2.4%÷12か月×2か月)
借入金 1,000,000について
2月から3月分の利息:6,000(=1,000,000×3.6%÷12か月×2か月)
合計 8,400 の支払利息を前払費用から振り替えます。
(貸方) 前払費用8,400
また、借入金 600,000 は、返済期日が決算日の翌日から1年以内なので、「短期借入金」
借入金 1,000,000 は、返済日が決算日の翌日から1年を超えるので、「長期借入金」とします。
7.商標権
商標権はすでに4年間償却されてきています。残りは6年分なので
120,000÷6年=20,000
が今年度償却すべき金額となります。
(貸方) 商標権 20,000
8.賞与引当金
すでに計上してきた5か月分の賞与引当金:150,000(=30,000×5か月)
支給見積額:200,000
差額:50,000(=200,000-150,000)
(貸方) 賞与引当金50,000
9.未払法人税等
第4問
問1 仕掛品勘定から製品勘定へ振り替える仕訳
製品1個当たりの標準原価が4,080円、当月の製品Aの生産量は1,500個なので、両者をかけ合わせることによって当月の製品(完成品)の金額を求めることができます。
4,080円×1,500個=6,120,000円
解答
(貸方) 仕掛品 6,120,000
問2 仕掛品勘定から原価差異勘定へ振り替える仕訳
当月の製造費用(製造原価の実際発生額)は、資料より直接材料費 729,600円、直接労務費 1,812,000円、製造間接費 3,890,000円と与えられています。
これらを合計すると、6,431,600円が求められます。
標準原価は問1より6,120,000円とわかっているので
原価差異:6,120,000円-6,431,600円=△311,600
となります。
原価差異がマイナスなので予定していたよりも使いすぎた状態、つまり不利差異(借方差異)です。
したがって、「借方 原価差異」となるように仕訳を行います。
解答
(貸方) 仕掛品 311,600
問3 製造間接費総差異
製品Aの1個当たりの標準原価のうち製造間接費は2,400円、当月の生産量は1,500個なので、製造間接費の標準原価は
2,400円×1,500個=3,600,000円
と求められます。
ここから製造間接費の実際発生額を引くことによって、製造間接費総差異を求めることができます。
製造間接費総差異:3,600,000円-3,890,000円=△290,000円
解答
290,000円 不利差異
問4 製造間接費総差異の分析
固定費率 1,500,000円÷1,000時間=1,500円
変動費率 2,500,000円÷1,000時間=2,500円
予算許容額 2,500円×920時間+1,500,000円=3,800,000円
予算差異 3,800,000円-3,890,000円=△90,000円
「能率差異は変動費のみで計算する」という指示があるので、それに従います。
能率差異 2,500円×(標準900時間-実際920時間)=△50,000円
操業度差異 1,500円×(標準900時間-基準1,000時間)=△150,000円
解答
予算差異 90,000円 不利差異
能率差異 50,000円 不利差異
操業度差異 150,000円 不利差異
第5問
第1工程月末仕掛品の原料費
第1工程の原料費合計を月末仕掛品の数量分だけ案分計算してやれば解答を出すことができます。
第1工程の原料費合計(30,000円+970,000円)÷5,000個×300個=60,000円
第1工程月末仕掛品の加工費
第1工程の加工費合計を月末仕掛品の加工換算量(完成品換算量ともいう)の分だけ案分計算することによって解答を出すことができます。
第1工程の加工費合計(40,000円+1,900,000円)÷4,850個×150個=60,000円
第2工程月末仕掛品の前工程費
第2工程月末仕掛品の前工程費を求めるには、まず第2工程に当月投入された前工程費(第1工程の完成品総合原価)を計算してやる必要があります。
第1工程の完成品総合原価
第1工程の投入額合計2,940,000円-(60,000円+60,000円)=2,820,000円
第2工程に投入される前工程費が2,820,000円とわかったので、これを利用して第2工程月末仕掛品の前工程費を計算します。第2工程の前工程費合計を案分計算すれば解答を出すことができます。
第2工程月末仕掛品の前工程費
第2工程の前工程費合計(300,000円+2,820,000円)÷5,000個×200個=124,800円
第2工程月末仕掛品の加工費
第2工程の加工費合計を加工換算量を使って案分計算することによって求めます。
第2工程の加工費合計(63,500円+1,112,500円)÷4,900個×100個=24,000円
第2工程完成品総合原価
第2工程完成品総合原価を求めるにあたって、まずは第2工程月末仕掛品の原料費を計算します。
第2工程月末仕掛品の原料費
第2工程の原料費合計(40,000円+560,000円)÷5,000個×200個=24,000円
第2工程完成品総合原価
第2工程の投入額合計から月末仕掛品原価を差し引いて、第2工程完成品総合原価を求めます。
投入額合計(2,076,000円+2,820,000円)-(124,800円+24,000円+24,000円)=4,723,200円