第142回日商簿記検定の合格発表が全国各地の商工会議所で3月7日 (月) から始まりました。手元の集計によると、3月7日時点で日商簿記2級の合格率は平均約14.3%、日商簿記3級の合格率は平均約28.0%となっています (第142回日商簿記検定2級・3級 合格発表速報)。残念ながら今回の試験においても 2級・3級ともに合格率が低くなりそうです。
日商簿記2級は企業が求める資格の人気ナンバー1 (企業が応募者に求める資格ランキングトップ10) ですが、問題が難しすぎて合格が厳しい試験になってしまうと、若者をはじめ熱意ある受験生の簿記離れが進んで、試験そのものが敬遠されてしまわないか心配です。
今までの常識が通用しない! 傾向が変化してきた日商簿記2級
当サイトでは、以前日商簿記2級試験の合格率が年度ごとに一定の水準に収まっていることを見抜き、第141回試験の合格率が極端に低い11.8% (受験者データ) という結果だったため、平成27年度最後の第142回試験の合格率は30%台に上昇すると予想しました。そのときの記事はこちら。
ところが、その予想は見事に裏切られ、第141回試験、第142回試験と連続して10%台の低い合格率になりそう。仮に第142回試験の最終的な合格率が今の水準のまま14%台に落ち着くと仮定すると、平成27年度 (140回、141回、142回試験) の日商簿記2級の平均合格率は約19.3%(第142回試験の実受験者数を55,000名と仮定した場合) 。この数字は過去14年間でもダントツに低い数字です。
注目すべきは何といってもH27年度の合格率約19.3%。
過去14年間の中でも際立って低い合格率となっていることがわかります。
以上のことから、日商簿記2級の試験傾向は完全に変わったと考えるべきでしょう。
つまり、従来はたまに合格率が低い回があったとしても次の回の合格率が回復したり、または年度を通して合格率が平均化されるよう調整されていたのに対して、今後はもうそのような調整は行わないと日商が宣言したと見ていいと思います。
なぜそのような試験にするのか意図はよくわかりませんが、とにかく2回連続合格率10%台となることは確実。日商簿記2級は晴れて難関資格の仲間入りを果たしました。
日商簿記2級試験に確実に合格する方法はあるか?
日商簿記は各回ごとの合格率が安定しないため、受験する回によって合格しやすい回と合格しにくい回があり不公平な一面があります。事情があってどうしてもこの資格を取得しなければならないという方にとっては、ちょっと迷惑な話ですね。
ただ、いつまでも嘆いているわけにはいきません。今後日商簿記2級試験の難易度が下がり簡単な試験になることは予想しづらいので、もし2016年6月の143回試験やその後の試験に確実に合格したいと思ったら、なるべく早めに対策を立て準備をしておく必要があるからです。
第142回日商簿記2級の試験問題
各地の商工会議所から発表されている合格率を見ると、合格するのが果てしなく難しく感じられますが、もう一度冷静に問題を見ておきましょう。
今回は
- 第1問 仕訳問題
- 第2問 株主資本等変動計算書
- 第3問 貸借対照表作成問題
- 第4問 標準原価計算
- 第5問 工程別総合原価計算
という構成。
第3問は、減価償却、長期前払費用、返品された商品を考慮した売上原価の算定など、非常に難しい問題でした。ただ、それ以外の問題はいずれも標準的かやさしい問題。第3問ができなくても、残りの第1問、第2問、第4問、第5問で得点できれば、理論上は合格は可能ということになります。
特に、第4問、第5問の工業簿記は過去の本試験問題と比較しても取り組みやすい問題で、ここでとりこぼすことはできませんでした。
実は、当サイトでは前々から日商簿記2級の試験対策において工業簿記を重視しようと指摘してきました。(確実に日商簿記2級に合格するための裏ワザ、まだ間に合う!第142回日商簿記2級試験に確実に合格する勉強法)
日商2級は配点こそ商業簿記60点、工業簿記40点と商業簿記のほうが高いのですが、工業簿記は商業簿記よりも簡単で得点源にしやすいという特徴があるからです。今回の問題を見ても、やはりこのことが当てはまります。
工業簿記なら、重点的に勉強して得意科目にすれば満点も可能です。もし工業簿記で40点取れれば、残りの3問で60点中30点が取れれば合格できます。
これなら何とかなりますよね?
商業簿記は難しく、工業簿記はやさしい。
日商簿記2級試験のこの傾向が続く以上、まずは工業簿記から勉強を始めるべきなのです。
工業簿記から始める日商2級対策
通常、予備校や専門学校の授業では、日商簿記2級の講義は「商業簿記➡工業簿記」の順で進みます。そのため、まずは商業簿記を勉強してからでないと工業簿記はわからないと思っている方もいますが、決してそんなことはありません。2級の工業簿記は、3級の商業簿記で学んだ仕訳や勘定記入の知識があれば十分理解できるので、試験に合格することを再優先に考えた場合、日商簿記2級の勉強を工業簿記から始めるというのが有効な対策になります。
試験対策書籍は各出版社から出ていますが、一番のおすすめは「スッキリわかる」や「簿記の教科書」シリーズ。すでにこの本を持っているという方は、このテキストを見ながら142回の問題が解けるかどうか確認してみるといいと思います。本試験問題を解くための知識がしっかり解説されているはずです。
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スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 第5版 [テキスト&問題集]
みんなが欲しかった 簿記の教科書 日商2級 工業簿記 第3版
工業簿記を究める裏ワザ!1級の範囲を勉強してしまおう!
「日商2級で出題される工業簿記は簡単だ、やさしい」と散々言ってきましたが、そうはいってもこれは講師目線の話。
工業簿記が基本的な問題だといっても、普通の受験生は試験本番でなかなかそう感じることはできないかもしれません。
どうしてこのようなギャップが生じるのかというと、一つには勉強量の差があります。簿記を仕事にしている人は、嫌になるほど問題を解きまくっているのに対して、これから3か月の勉強で合格を目指そうという方は、時間の制約もありなかなかそこまで勉強することができません。
また、勉強内容の深さも異なります。簿記の先生になるような人はたいてい日商1級に合格しており、場合によっては会計士資格を持っている人さえいます。
日商簿記1級や会計士試験で勉強する工業簿記・原価計算は、日商簿記2級で学ぶ工業簿記よりも範囲が広く、内容も深くつっこんで勉強します。
そこまでやっておくと、日商簿記2級の工業簿記は基本的で簡単な問題に感じるのは当たり前ですね。
そこで、もし確実に日商簿記2級に合格したい。そして工業簿記を究めて得点源にしたいという方は、日商2級の工業簿記のテキストに加えて1級の工業簿記のテキストも使って学習しておくといいでしょう。(そこまでできるかという問題もありますが、本気で確実に合格したいならここまでやるべきです。)
工業簿記のテキストでおすすめは、やはり「スッキリわかる」シリーズか「簿記の教科書」。
さすがに問題集までやるのはキツイので、テキストと基本問題部分だけで十分だと思います。
簿記の教科書 日商1級 工業簿記・原価計算 (1) 費目別計算・個別原価計算編
簿記の教科書 日商1級 工業簿記・原価計算 (2) 総合原価計算・標準原価計算編
簿記の教科書 日商1級 工業簿記・原価計算 (3) 直接原価計算・意思決定会計編
TAC出版では、簿記の教科書を使った簿記1級独学道場という講座を開講しています。テキストだけでは理解が難しいという場合は、ところどころ講義を確認しながら読み進めていくと理解が深まると思います。
まとめ
日商簿記2級は、合格が難しい難関試験となってしまいました。
どうしても日商2級に合格したいという方は、その上位資格である日商1級の範囲までカバーしておくのが有効です。
ただ、さすがに1級全範囲をやるのは大変すぎます。
1級の工業簿記・原価計算を勉強して、2級の工業簿記なら何が出ても解ける状態にする
これが、現実的な対策となるでしょう。
▼1級独学道場の内容はこんな感じです。
143回 簿記1級 独学道場 フル | 75,000円 | ||
含まれる教材等 | |||
1級 商・会 6冊セット | 0 | 06,610円 | |
1級 工・原 6冊セット | 0 | 06,610円 | |
教科書 問題集 合計(12冊分) | 13,220円 | ||
143回 1級 直前予想 | 0 | 01,944円 | |
143回 1級 総まとめ | 0 | 01,264円 | |
日商簿記1級 的中答練4回、 全国模試1回 | 日商簿記1級 的中答練 | ー | ー |
その他 Web講義ほか | ー | ー | ー |