工業簿記第4問で仕訳問題が出題された場合にはここで扱っている仕訳問題の解き方を使えば簡単に答えを出すことができます。
今回は労務費の予定配賦について確認していきましょう。
労務費の仕訳➡支払いか消費かに注意します。
労務費(給料)は自分がサラリーマンとして受け取る給料の意味ではなく、店主として従業員に支払うお金のことなので費用です。
簿記では給料支給(支払い)の場面なのか、それが工場でどのように使われたか(給料の消費額)の計算に分けて処理の仕方をしっかり区別して考えることが大切です。
給料支給時の処理については、3級商業簿記で学んだ知識で理解することができます。次の例題で考えてみましょう。
例題
順を追って確認していきましょう。
給料➡費用
費用の発生=借方
(貸)
所得税預り金は源泉徴収分で負債なので
所得税預り金➡負債
負債の増加=貸方
(貸) 所得税預り金 100
となります。
以上の2つを合わせると
(貸) 所得税預り金 100
(貸) 900
となり、貸方に差額が発生します。
この差額の900円は従業員の手取り分で当座預金から支払っているので解答は次のようになります。
解答
当座預金➡資産
当座預金から支払い➡資産の減少=貸方
(貸) 所得税預り金 100
(貸) 当座預金 900
ただし2級ではこの給料の支払いの仕訳が問われることはほとんどありません。3級の内容だからです。
賃金・給料の消費
2級では、給料支払いの仕訳ではなく、消費(使った)時の仕訳がよく問われます。
また給料ではなく賃金・給料とか賃金を使う場合が多いです。問題文の指示に注意しましょう。
- 当月の直接工による労務費の消費高を計上する。
- 当月の間接工による労務費の消費高を計上する。
- 当月、工場での直接工および間接工による賃金の消費高を計上した。
- 当月の労務費の実際消費額を計上する。
問題文にこのような文言があれば、すべて労務費(賃金・給料)の消費時の仕訳が問われていることになります。
例題
労務費は費用です。
費用のホームポジションは借方です。
したがって、労務費(賃金・給料)を消費した場合(=減少した場合)は貸方に賃金・給料と書きます。
賃金・給料➡費用
労務費を消費した➡費用の減少=貸方
(貸) 賃金・給料 1,000
問題文より賃金・給料は製造指図書#101のために消費されているため、借方は製造中を表す仕掛品を記入します。
仕掛品➡資産
資産の増加=借方
(貸)
以上の2つをまとめると解答の仕訳となります。
解答
(貸) 賃金・給料 1,000
賃金・給料を消費したということは、製造中の状態になるということなので仕掛品が増えます。また賃金・給料のうち間接費となる分については製造間接費に振り替えます。
- 直接工の直接作業⇒仕掛品
- 直接工の間接作業⇒製造間接費
- 間接工の賃金・給料⇒製造間接費
のように分類されます。しっかり確認しておいてください。
例題
このような問題であれば
- 直接工の直接作業⇒仕掛品 500円
- 直接工の間接作業⇒製造間接費 200円
- 間接工の賃金・給料⇒製造間接費 300円
と分類したうえで
賃金・給料➡費用
労務費を消費した➡費用の減少=貸方
(貸) 賃金・給料 1,000
仕掛品➡資産
資産の増加=借方
(貸)
製造間接費➡費用
費用の発生=借方
(貸)
となります。以上の3つを合わせると解答の仕訳となります。
解答
(借) 製造間接費 500
(貸) 賃金・給料 1,000
【労務費の消費・応用問題1】
応用問題です。
間接工の賃金・給料はすべて製造間接費となります。
ただ賃金・給料については、支払日と締日がズレるため、当月の費用を正確に把握するため調整(3級で習った見越しの処理)が必要になります。
ここでは見越しの処理の説明は省略し、解き方の覚え方だけを示しておくことにします。
ズバリ
当月分を足してから前月分を引く
と覚えて問題を解きます。
つまり「前月賃金未払高70,000円、当月賃金支払高500,000円、当月賃金未払高100,000円」という場合
➡当月賃金支払500,000円と当月賃金未払100,000円を足して、前月賃金未払70,000を引きます。
この結果求められた530,000円が当月の正確な費用の金額ということになります。
500,000円+100,000円-70,000円=530,000円
この530,000円を当月の賃金・給料(費用)として計上します。
当月の間接工の賃金・給料(費用)=530,000円
間接工の賃金・給料なので製造間接費を使います。
製造間接費➡費用
費用の発生=借方
(貸)
賃金・給料➡費用
賃金・給料を消費した➡費用の減少=貸方
(貸) 賃金・給料 530,000
2つを合わせると解答の仕訳となります。
解答
(貸) 賃金・給料 530,000
【労務費の消費・応用問題2】
応用問題2です。これは直接工の労務費の問題です。
予定賃率を使って計算することに注意しましょう。
材料のところでも材料副費の予定配賦というのが出てきました。
これと基本的な処理の仕方は同じです。
予定配賦は難しそうに見えますが、次のように読み替えて考えてみてください。
- 予定=あらかじめ、前もって
- 配賦=割り当てる
ということですから、
予定賃率を用いる
➡前もって決めておいた時給を使って計算する
という意味になります。
賃金・給料は費用です。
この費用を直接工の直接作業であれば仕掛品、直接工の間接作業であれば製造間接費に割り当てていくことになります。
では賃金・給料を仕掛品や製造間接費に割り当てるにはどうすればいいかというと
直接作業分の金額だけ仕掛品を増やし、間接作業分の金額だけ製造間接費を増やし、この合計分を賃金・給料から減らせばよいということになります。
- 直接工の直接作業⇒仕掛品 1,500円/時間×800時間=1,200,000円
- 直接工の間接作業⇒製造間接費 1,500円/時間×40時間=60,000円
となるので
仕掛品➡資産
資産の増加=借方
(貸)
製造間接費➡費用
費用の発生=借方
(貸)
賃金・給料➡費用
賃金・給料を消費した➡費用の減少=貸方
(貸) 賃金・給料 1,260,000
以上の3つを合わせたものが解答の仕訳となります。
解答
(借) 製造間接費 60,000
(貸) 賃金・給料 1,260,000
「労務費…予定配賦」とあったら、賃金・給料を減らすから「貸方 賃金・給料」
がポイントです。