日商1級の商業簿記・会計学は出題範囲が広く論点数が多い科目です。そのため、満点を取ろうとがんばるのではなく、取れる問題を確実に取る=部分点狙いに徹することが重要です。
難易度の高い問題も出題されますが、そうした難問は受験生のほとんどが解けないので気にする必要はありません。
難問に惑わされず、取りこぼしの許されない基本問題を確実に正解して得点を積み上げていけば必ず合格できます。
合格を信じて毎日コツコツ問題を解くトレーニングを続けてください。
ただし実際の試験では、出題範囲を網羅するようにまんべんなく出題されるかといえばそうではなく、過去の本試験の出題傾向から出題されやすい(=よく出る)論点とほとんど出題されない論点があるのも事実です。
出題傾向を知り、出題されやすい論点からつぶしていくことによって、試験本番でも取れる問題を確実に取ることができるようになります。
商業簿記・会計学の出題傾向を出る順にまとめてみたので勉強の優先順位付けの参考にしてみてください。
商業簿記・出る順
出題形式
商業簿記では総合問題が出題されます。出題形式ごとに分類すると次の表のようになります。
残高試算表形式の問題が8回と一番出題回数が多く、最近の試験でも144回、141回、138回で出題されています。
その他には連結会計が3回、損益計算書が2回、貸借対照表、損益勘定・繰越試算表、本支店会計が各1回ずつ出題されています。
出題形式 | 回数 | 最近の出題 |
---|---|---|
損益計算書 | 2/16 | 146 |
貸借対照表 | 1/16 | 128 |
残高試算表 | 8/16 | 144 |
損益勘定・繰越試算表 | 1/16 | 135 |
本支店会計 | 1/16 | 137 |
連結会計 | 3/16 | 134 |
出題論点
さらに詳しく論点ごとの内訳を見ていきましょう。
毎回のように出題されている棚卸資産の評価、減価償却、有価証券、貸倒引当金の4論点は最優先で対策すべきです。ここを苦手にしたままでは合格が難しくなってしまいます。
また、リース取引、社債、経過勘定、退職給付会計もよく出題されているので、手を抜くことはできません。
さらに余裕がある方は、外貨換算会計、税効果会計、ヘッジ会計、売価還元法、特殊商品売買や資産除去債務、減損会計まで見ておくようにしましょう。
順位 | 論点 | 回数 | 出題確率 |
---|---|---|---|
01 | 棚卸資産の評価 | 15/16 | 093.8% |
01 | 減価償却 | 15/16 | 093.8% |
03 | 有価証券 | 14/16 | 087.5% |
04 | 貸倒引当金 | 12/16 | 075.0% |
05 | リース取引 | 08/16 | 050.0% |
06 | 社債 | 07/16 | 043.8% |
06 | 経過勘定 | 07/16 | 043.8% |
06 | 退職給付会計 | 07/16 | 043.8% |
09 | 税効果会計 | 06/16 | 037.5% |
10 | 特殊商品売買 | 05/16 | 031.3% |
10 | 外貨換算会計 | 05/16 | 031.3% |
10 | 新株予約権 | 05/16 | 031.3% |
13 | 剰余金の配当等 | 04/16 | 025.0% |
13 | ヘッジ会計 | 04/16 | 025.0% |
15 | 自己株式 | 03/16 | 018.8% |
15 | 売価還元法 | 03/16 | 018.8% |
15 | 資産除去債務 | 03/16 | 018.8% |
15 | 為替予約 | 03/16 | 018.8% |
19 | ソフトウェア | 02/16 | 012.5% |
20 | 不動産の流動化 | 01/16 | 006.3% |
20 | 減損会計 | 01/16 | 006.3% |
20 | 償却債権取立益 | 01/16 | 006.3% |
20 | 長期貸付金の譲渡 | 01/16 | 006.3% |
総合問題対策
1級商業簿記で出題される総合問題対策としては、税理士簿記論用の総合問題の解き方が解説されているこの本がおすすめです。たくさんの問題を手早く処理していくためのテクニックを学ぶことができます。
会計学・出る順
計算問題
株式交換・株式移転、社債や減損会計、減価償却、資産除去債務という有形固定資産会計の論点、さらに会計上の変更・誤謬の訂正がよく出題されています。これらの問題を中心に対策を立てておくといいでしょう。
141回検定試験では小問の一つとして連結損益計算書が出題されました。日商1級では連結がらみの問題がよく出題されているので、140回の連結キャッシュ・フロー計算書、138回の連結包括利益計算書と合わせて、しっかり対策をしておくべき問題といえます。
会計学は出題傾向と呼べるものがなく対策を立てづらいですが、最低限過去問で出題された問題はできるようにしておくべきでしょう。
順位 | 論点 | 回数 | 最近の出題 |
---|---|---|---|
1 | 株式交換・株式移転 | 3/16 | 141、137 |
1 | 減損会計 | 3/16 | 135 |
3 | 社債 | 2/16 | 131 |
3 | 減価償却 | 2/16 | 134 |
3 | 資産除去債務 | 2/16 | 137 |
3 | 会計上の変更・誤謬の訂正 | 2/16 | 138 |
3 | 有価証券 | 2/16 | 141、132 |
3 | 事業分離 | 2/16 | 146、134 |
9 | 税効果会計 | 1/16 | 123 |
9 | ソフトウェア | 1/16 | 126 |
9 | 受取手形の利息の認識 | 1/16 | 128 |
9 | 外貨換算会計 | 1/16 | 128 |
9 | リース会計 | 1/16 | 135 |
9 | 連結包括利益計算書 | 1/16 | 138 |
9 | 連結キャッシュ・フロー計算書 | 1/16 | 140 |
9 | 連結損益計算書 | 1/16 | 141 |
9 | 分配可能額 | 1/16 | 140 |
9 | 工事契約 | 1/16 | 143 |
9 | 連結会計(在外子会社) | 1/16 | 143 |
9 | 連結貸借対照表 | 1/16 | 144 |
9 | 退職給付会計(個別と連結) | 1/16 | 144 |
9 | 通貨オプションによる予定取引のヘッジ | 1/16 | 146 |
スケジュール
商業簿記・会計学は範囲が広いので、優先順位の高い論点から毎日少しずつ継続して勉強していきましょう。
科目の特性から論点ごとに別々に勉強することができるため、細切れ時間も使って進めていくのがいいと思います。
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