工業簿記第4問で仕訳問題が出題された場合にはここで扱っている仕訳問題の解き方を使えば簡単に答えを出すことができます。
今回は材料・材料副費の予定配賦について確認していきましょう。
材料の仕訳➡購入か消費かに注意します。
材料は製品の実体となる非常に重要な要素です。
簿記では購入の場面とそれを工場に投入し消費する場面とに分けて考えるとわかりやすくなります。
材料の購入
材料の購入については、3級商業簿記で学んだ知識で全部できてしまいます。
具体的な例を確認しておきましょう。
- 当月、素材1,000円および補修用材料500円を購入した。
- 原料1,000kgを1kg当たり100円で掛けで購入した。
- 材料1,000円を掛けで購入した。
など、表現は素材や原料といった用語が用いられることもありますが、3級商業簿記で学んだ仕訳の方法にしたがえば決して難しい内容ではありません。
日商2級では、材料勘定を用いて処理されます。
まずは
問題
の仕訳がどうなるか考えてみましょう。すると、
材料という資産を購入したため、資産が増加します。
資産のホームポジションは借方なので、借方に材料を書きます。
材料➡資産
資産の増加=借方
(貸)
となります。
貸方は代金の支払い方法によって、現金や当座預金、買掛金といった勘定科目が入ることになります。
今回は「掛け」で購入したので
買掛金➡負債
負債の増加=貸方
(貸) 買掛金 1,000
となります。この2つを合わせると
(貸) 買掛金 1,000
となり、これが解答の仕訳です。
【材料の購入・応用問題】
金額は異なりますが136回検定試験でこのような問題が出題されました。
「材料副費として100円を予定配賦している」
と書いてあります。「予定配賦」と聞くと、それだけで難しく感じてしまいますが、大丈夫です。
考えてみましょう。
まず材料副費とは、代金のほかにかかった引取運賃などの費用のことです。3級商業簿記で勉強した付随費用と同じです。
3級で勉強したことを覚えてますか?
付随費用は仕入や備品の取得原価に含めるのでした。
同様に工業簿記でも材料副費を材料に含めます。
「材料1,000円を購入し、材料副費として100円…」と書いてあれば「材料代金1,000円+付随費用100円」ということなので、材料は1,000円ではなく1,100円(=1,000円+100円)にしてやればいいということがわかるのです。
材料➡資産
資産の増加=借方
(貸)
一方、材料代金1,000円分については掛けで購入したので
買掛金➡負債
負債の増加=貸方
(貸) 買掛金 1,000
となり、2つを合わせると
(貸) 買掛金 1,000
となります。
さて、ここから先が問題です。
このままだと、借方が1,100、貸方が1,000で借方が100円多く貸借が一致しません。
(貸) 買掛金 1,000
(貸) 100
貸方に発生する差額100円をどうすればよいのでしょうか。
ここでもう一度問題文を読み直してみると「材料副費として100円を予定配賦している」と書いてあります。
ここがポイントとなります。
「予定配賦」は、次のように読み替えて考えます。
- 予定=あらかじめ、前もって
- 配賦=割り当てる
- 材料副費=付随費用
ということから、
「材料副費として100円を予定配賦している」
➡「付随費用100円をあらかじめ材料に割り当てている」
ということになります。
材料副費は費がつくから費用です。
この分だけ材料の取得原価に加えてやればよいのです。
つまり材料副費の金額だけ材料を増やして、その分材料副費を減らせばよいということになります。
材料は資産で材料副費100円分増やすので、
材料➡資産
資産の増加=借方
(貸)
となり、同時に材料副費という費用を100円分減らすので
材料副費➡費用
費用の減少=貸方
(貸) 材料副費 100
2つを合わせると
(貸) 材料副費 100
となり、これが「材料副費として100円を予定配賦している」の仕訳です。
全部をまとめると
(貸) 買掛金 1,000
(貸) 材料副費 100
となり、これが解答仕訳となります。
「材料副費として…予定配賦している」とあったら、材料副費を減らすから「貸方 材料副費」
と覚えておきましょう。
材料の消費
次は購入した材料を使う(消費する)場面です。材料の消費は材料の投入といっても一緒です。
「倉庫に搬入した」だけではまだ消費とはならないので注意しましょう。
- 製造指図書♯101のために原料1,000kgを出庫した。
- 製造指図書♯2向けの消費は1,000kgであった。
- 素材1,000個を消費した。
などの表現があったら、いずれも材料を使った(消費した)ことになります。
材料を消費すると、材料という資産が減少します。
資産のホームポジションは借方なので、減少した場合は貸方に材料を書きます。
たとえば
とあったら
材料➡資産
資産の減少=貸方
(貸) 材 料 1,000
となります。
また材料を消費したということは、製造中の状態になるということなので、仕掛品が増えます。
仕掛品という資産が増えるので、借方仕掛品と仕訳を行います。
仕掛品➡資産
資産の増加=借方
(貸)
以上の2つを合わせると
(貸) 材 料 1,000
となり、これが解答仕訳(材料消費時の仕訳)となります。