自己株式と自己新株予約権の考え方と処理

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Q.なぜ自分で発行したにもかかわらず取得時に時価で計上するのでしょうか? また、新株予約権の処理は資本取引・損益取引のどちらに該当するのか? についてもお願いします。

①自己株式の取引を資本取引、自己新株予約権の取引を損益取引とすることについて

  • 自己株式→取得には付随費用を含めない→処分・消却の時に発生した損益は、その他資本剰余金(資本)の調整 なので、資本取引とする。※取得に係る付随費用は損益取引として処理
  • 自己新株予約権→取得には付随費用を含める→処分・消却の時に発生した損益は、特別損益としての処理なので損益取引とする。

どちらも取得時に損益を認識せず、処分・消却時に損益を認識するのが特殊。このような理解でいいでしょうか?

②取得時にどちらも時価で計上する理由は、自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準32 『~自己株式を取得したのみでは発行済株式総数が減少するわけではなく、取得後の処分もあり得る点に着目し、自己株式の保有は処分又は消却までの暫定的な状態であると考え、取得原価で一括して純資産の部の株主資本全体の控除項目とする方法が適切であると考えた。』がその理由ということでいいでしょうか?

③新株予約権は資本取引なのでしょうか?損益取引なのでしょうか?

権利行使期限の到来時の処理のみが損益取引でそれ以外の取引は資本取引ではないか?と思ったのですが、間違えないでしょうか?

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A.

自己株式と自己新株予約権の 考え方と処理

1.まず自己株式と自己新株予約権の考え方と処理について確認しておきます。

質問者様の考え方と処理の結び付きは合っていますが、 理由と結論が逆になっているという印象です。

「資本取引」とは、自己資本そのものを増減させる取引で、 株主と直接行われる取引を指すものです。

一方、「損益取引」は、「資本取引」以外のものと考えることができます。

そのように考えると、自己株式は株主から株式を買い取る 訳ですから、株主と直接行われる取引なので「資本取引」に 該当します。

一方、新株予約権や自己新株予約権は株主との取引とはいえません。(もし今の株主が新株予約権を持っているとしても、「新株予約権を持っているから株主」ということにはなりません。) そのため、新株予約権に関する取引は「資本取引以外」すなわち 「損益取引」というふうに今の日本の会計基準では考えています。

先に資本取引か損益取引かの判断があり、そこから処理が導かれるという関係なのです。

「損益取引」であれば、他の損益取引である仕入や固定資産の購入と処理を合わせた方が整合的ですし、損益取引から生じる差額は損益計算書に載せるべきものといえます。

そのため、自己新株予約権の取得原価に付随費用を含めたり、処分時の差額を損益計算書に計上するといった処理につながります。

これに対して、自己株式は「資本取引」から生じるものなので、差額を損益計算書に計上すべきものではなく、他の資本取引である株式の発行などと処理を揃えるべきです。

そのため、処分差額は損益計算書に計上せず、(資本取引なので) その他資本剰余金で処理したり、取引に必要な費用は別の取引と考えて、取得原価に含めないことになっています。(株式の発行に要する費用も、資本取引とは別取引として考えていることと整合します。)

2.取得時にはどちらも「取得原価」で評価します。ただ、取得原価は 通常、「取得時の時価」を基礎に決まるため「取得時に時価で計上」とも言えそうですが、あまりそのような表現はしないですね。

書いていただいた基準の箇所は、自己株式を「取得原価」で表示するか「時価」で表示するかの理由ではなく、直接減額する形式ではなく間接的に控除する形式で表示する理由といえます。

基準に自己株式を取得原価で評価する理由はありませんが、他の資本取引から生じる資本金なども時価評価しないことから、ある意味当然の処理なので触れていないだけかもしれません。

3.新株予約権は、現行制度上は損益取引の一種と考えられています。

ただ、権利行使されたときは、「株式の発行」または「自己株式の処分」という 資本取引も同時に行われているので、資本取引の性格の方が強いといえます。

なお、資本取引・損益取引については、明らかなもの以外はあまり気にする必要はありません。

例えば、剰余金の配当のように学者の間でも結論があまりはっきりとついていないものもあったり、日本と諸外国で考え方が違うものもあります。現在結論がハッキリしているものをおさえておけば十分です。